「とる」という言葉に対応する漢字には、「取る」、「撮る」、「獲る」、「盗る」、「採る」、「執る」、「捕る」、「録る」、「摂る」など、多くのものがあります。この中で特に使い分けが難しいのは「取る」と「摂る」ではないでしょうか。
この記事では、「取る」と「摂る」の違いについて詳しく解説します。
「 取る 」の意味・使い方
「取る」という漢字は、捕虜や獲物の数を数えるために耳を切り取ったことに由来しています。そのため、「取る」には「物理的に手でつかむこと」や「自分のものにすること」という意味があります。この言葉は、具体的に何かを手に取る、取得する、獲得するなどの行為を指す際に用いられます。
例
- 金庫から重要な書類を取ってきた。
- 天下を取るのは普通の人にはできない偉業だ。
このように、「取る」は物理的な取得や、抽象的な意味での獲得を指す際に使われます。例えば、重要な書類や物品を「取る」場合、それは実際に手に取って取得する行為を表します。また、「天下を取る」という表現は、権力や地位を獲得するという意味で使われます。
「 摂る 」の意味・使い方
一方で、「摂る」は「いろいろなものを合わせて取り入れる、取り込む」という意味がありますが、特に人体に直接取り入れる場合に使われます。食べ物や飲み物、薬などを口から摂取する際によく使われます。この言葉は、栄養素や水分などを身体に取り込む行為を指す際に用いられます。
例
- サプリメントを摂っても、体内で有効成分が活用されるとは限らない。
- 冬でも水分を摂らないと、脱水症状になることがある。
「摂る」は主に栄養や水分、薬物などを体内に取り入れる行為を指す際に使われます。例えば、健康維持のためにビタミンやミネラルを「摂る」場合、それはこれらの栄養素を体内に取り込むことを意味します。また、水分を「摂る」場合、適切な量の水分を摂取することが重要です。
「 取る 」「 摂る 」の違い
「取る」と「摂る」の違いを理解するためには、それぞれの言葉が使用される具体的な場面を考えることが有効です。
取るの具体例
「取る」は物理的に何かを手に取る、取得する、獲得する行為を指します。
例
- 部屋の鍵を取る:物理的に鍵を手に取る行為を指します。
- 彼は試験で高得点を取った:ここでは、試験の結果として高得点を獲得するという意味で使われます。
- 彼女はそのプロジェクトのリーダーの役割を取った:役割を獲得する、引き受けるという意味です。
摂るの具体例
「摂る」は、主に栄養素や水分、薬物などを体内に取り入れる行為を指します。
例
- 彼は毎朝ビタミン剤を摂る:毎朝ビタミン剤を体内に摂取する行為を指します。
- 医者は彼にもっと水分を摂るように勧めた:十分な水分を摂取することを勧めています。
- 彼女は健康のためにバランスの取れた食事を摂るよう心がけている:栄養バランスの取れた食事を体内に取り入れることを意識しています。
食事を「取る」と「摂る」
食事を「とる」という場合、一般的には「摂る」が使われますが、この使い方に違和感を覚える人もいます。その理由は、「摂る」が常用漢字ではないことや、食事は「摂る」対象物ではなく行為そのものだから「食事をする」が適切という意見があるからです。
しかし、常用漢字表は変更される可能性があり、「摂る」が常用漢字になることも考えられます。また、「食事」には「食べること」という意味のほかに「食べ物」という意味もあるため、「食事をとる」という表現が必ずしも不自然とは言えません。
具体例での使い分け
食事の場面
「取る」:宴会などの場面で、目の前にある料理を手に取る場合に使います。
- 例:彼は寿司を取って食べた。
「摂る」:日常の食事や栄養補給を表す場合に使います。
- 例:彼は毎日バランスの取れた食事を摂っている。
医療の場面
「取る」:薬を物理的に手に取る行為を指します。
- 例:彼は薬を取って飲んだ。
「摂る」:薬を体内に取り入れる行為を指します。
- 例:彼は風邪薬を摂って休んだ。
まとめ
「取る」と「摂る」の違いを理解し、適切に使い分けることが重要です。まとめると以下の通りです:
- 取る:物理的にものを手に取ること、自分のものにすること。
- 摂る:体内に飲食物や薬物を直接取り入れること。
口から何かを取り入れる場合は「摂る」を使うのが一般的です。しかし、使い方にこだわる方もいるため、迷った場合は平仮名で「とる」とするか、「摂取する」という言葉に置き換えると良いでしょう。
これらの違いを理解することで、適切な場面で適切な言葉を使うことができます。ぜひ参考にしてみてください。