「おくれる」という言葉にはいくつかの漢字が当てはまります。特に「遅れる」と「後れる」は似た意味を持っていますが、ニュアンスや使い方には違いがあります。
この記事では「遅れる」と「後れる」の違いについて、詳しく解説します。
「遅れる」の意味・使い方
「遅れる」は、「決められた時期や時間に間に合わないこと」、また「標準に比べて進みが遅いこと」を意味します。具体的には以下のような使い方があります。
- 時間に間に合わない場合 「遅れる」は特に時間に関連する遅れを表します。例えば、会議や授業、電車など、定められた時間に間に合わない場合に使います。「遅刻」「遅延」といった言葉もこの意味を含んでいます。例としては、「遅刻してしまった」「電車が遅延している」といった使い方が挙げられます。
- 標準に対する遅れ 「時計が遅れている」「進捗が遅れている」といった文脈で使われることもあります。ここでは、基準となる時間や進度に対して遅れている状態を表現します。例えば、「プロジェクトの進行が予定より遅れている」という場合です。
- 対義語 対義語には「間に合う」「早まる」「進む」などがあります。これらの言葉は、遅れるという状態の反対、すなわち予定通りに行動することや、時間が余裕がある状態を表します。
例文
- 大型イベントの交通規制により、到着時刻が大幅に遅れてしまった。
- 祖父の時計は100年間、一度も遅れたことがなかった。
このように「遅れる」は時間やスケジュールに関する遅延を表現する際に使われ、主に「時間」に関連する概念です。
「後れる」の意味・使い方
「後れる」は「後に取り残されること」や「親しい人に先立たれること」を意味します。具体的には以下のような使い方があります:
- 取り残される場合 「後れる」は周囲が進んでいく中で、自分だけが取り残される状況を表します。例えば、流行に遅れる、技術についていけないなどの文脈で使います。ここでは、周囲の進行や流れに対して遅れを取る状態を指します。
- 親しい人に先立たれる場合 あまり使われることは少ないですが、例えば「妻に後れる」といった表現で、親しい人が先に亡くなることを示すことがあります。この用法は、一般的には日常的な会話ではあまり使われませんが、文学的な表現や公式な文書で見かけることがあります。
- 対義語 対義語には「先んずる」があります。「先んずる」は、他の人よりも先に行動すること、あるいは先に進むことを意味します。
例文
- 彼はいつも流行の後れを取っていると言われる。
- 死に後れるのは避けたいが、早死にするのも望ましくない。
「後れる」は時間に関する遅れというよりも、他者との相対的な位置や状況の遅れを表す場合に使われます。
「遅れる」と「後れる」の使い分け
「遅れる」と「後れる」の違いを理解するには、どのような状況で使われるかを考えることが重要です。以下のポイントに注目して使い分けましょう:
- 定められた時期や時刻がある場合 この場合は「遅れる」を使います。具体的には、約束やスケジュールに対して遅れが生じる場合です。例えば、「会議に遅れる」「電車の到着が遅れる」などが該当します。
- 決められた時期や時刻がない場合 この場合は「後れる」を使います。周囲の進度や流行に対して自分が遅れを取っている場合に使います。例えば、「流行に後れる」「技術革新に後れる」といった表現です。
- 「おくれをとる」の表現 「おくれをとる」という言い回しは、通常「取り残される」や「ついていけない」という意味で使われるため、正しくは「後れをとる」となります。この表現は、他者との相対的な遅れを示す際に適しています。
具体例と使い方
具体的な使用例を見てみましょう。以下は「遅れる」と「後れる」の使い分けの例です:
例:電車の遅延
- 遅れる:電車が定められた時刻に到着しなかった場合、「電車が遅れた」と言います。この場合、時間に関する具体的な遅れを指します。
- 後れる:この場合には使いません。電車の遅延は時間的な問題であり、「遅れる」を使うのが適切です。
例:技術の進歩
- 遅れる:企業や国が技術革新の速度についていけていない場合、「技術が遅れている」と言います。この場合、技術の進行に関する遅れを指します。
- 後れる:技術革新についていけないことを表現する場合、「技術革新に後れている」と言います。ここでは、周囲の進展に対する遅れを表現しています。
例:学校の授業
- 遅れる:学校の授業に遅刻した場合、「授業に遅れた」と言います。この場合、授業開始時刻に対する遅れを指します。
- 後れる:授業の進度についていけない場合、「授業についていけず、後れている」と言います。ここでは、授業内容についていけない状態を表現しています。
まとめ
「遅れる」は、定められた時期や時刻に間に合わないことや、標準よりも遅い進行を意味します。「後れる」は、周囲から取り残されることや、親しい人に先立たれることを意味します。定められた時期や時刻がある場合は「遅れる」、ない場合は「後れる」と覚えておくと良いでしょう。
使い分けに迷ったときは、「遅刻」「遅延」といった言葉が当てはまるかどうかを考え、違和感がなければ「遅れる」、違和感があれば「後れる」で大丈夫です。このポイントを押さえることで、適切な使い分けができるようになります。