剣道の段位は八段が頂点とされますが、その段位が剣道の強さをそのまま表すわけではありません。実際、全日本剣道選手権大会の優勝者には四段や五段の選手もいます。剣道の段位と強さは微妙な関係が深く関わっています。
段位と強さが比例しない理由
剣道では強さと段位が必ずしも一致しない理由がいくつかあります。
年齢制限と段位審査
昇段するためには段位ごとに修行年数や年齢の条件があり、八段になるには七段で10年以上修行し、満46歳以上でなければならないとされています。若くして実力を高めた選手でも、年齢制限のために高段位を得られないことが多いのです。そのため、段位が低くても実力が突出した選手が大会で勝つケースも珍しくありません。
剣道は降格がない
剣道では、弱くなったからといって段位が下がることはありません。怪我や加齢で実力が低下しても、取得した段位はそのまま維持されます。一方、全日本剣道選手権の優勝者の多くが20〜30代というように、体力やスピードが重要視される試合では、比較的若い選手が有利になる傾向があります。
段位の持つ意味:単なる実力を超える「剣道の奥義」
段位には剣道の技術的な強さだけでなく、深い知識や精神性が求められます。
昇段審査では、「一本を取る」ことだけが重視される試合とは違い、竹刀の扱い方や理にかなった打突が重視されます。正しく振る舞えているか、きれいな型ができているか、座り方はきれいか、猫背になっていないか正しい姿勢になっているかがポイントになりますね。フェイントや引き技などで有効打突が決まったとしても、昇段審査ではそれが評価されないこともあります。
また、審査では得意技に頼らず、様々な技を駆使して「剣の理」を表現することも求められます。これにより、単純な実力だけでは昇段できないことが多くの剣道家の共通認識です。
高段位者は最強?!
実際の試合で高段位者が無敵というわけではありませんが、特に八段に関しては、その厳しい審査基準と合格率の低さ(1%程度以下)から、業界では「神の領域」とも言われています。さらに、高段者の多くが数十年にわたる鍛錬を経ており、試合での結果以上に、剣道の本質的な強さと深い理解を持っていると言えます。
段位の試験や試合だけではわからない「剣道の真の強さ」
剣道は単なるスポーツではなく、もともと日本刀での真剣勝負を基にしています。試合では若い選手がスピードとパワーで一本を取ることがあっても、高段者は「攻めの間合いや中心の取り方」を極めており、一見隙のない立ち回りが特徴です。剣道の本質においては、ただの勝敗を超えた「強さ」が存在し、その深みが剣道の魅力を増しています。
まとめ
剣道の段位は単なる実力の証明ではなく、剣道の本質を理解し深めていくための修行を積んだ道でもあります。全日本剣道選手権では体力やスピードある若い段位の選手が勝つこともありますが、剣道家にとって段位とは「技」や「知識」、「精神の研鑽」を表すものであり、試合結果だけでは測れない「強さ」が内包されています。それこそが、剣道の最大の魅力ではないでしょうか。試合だけでなく、剣道の奥義や真髄を体得し、自らを磨き続けることができるのも剣道の大きな魅力といえるでしょう。