日本語には、同じ発音でも異なる意味を持つ言葉が存在します。その中でも、「覚える」と「憶える」は、意味やニュアンスが異なるため、使い分けが求められます。
この記事では、それぞれの言葉の意味と使い方、そして違いについて詳しく解説し、適切な使い方を理解していただけるようにします。
「覚える」の意味と使い方
「覚える」という言葉は、非常に幅広い意味を持つ日本語の動詞です。主に以下のような意味で使われます。
- 記憶する:情報や出来事を頭に留めること。例えば、「英単語を覚える」とは、英語の単語の意味やスペルを記憶することを意味します。また、「電話番号を覚える」といった使い方も同様です。
- 習得する:新しい技能や知識を身につけること。「ピアノの弾き方を覚える」や「料理のレシピを覚える」といった場合、技術や知識を習得することを指します。ここでは「覚える」が「学ぶ」とほぼ同じ意味で用いられます。
- 感じる:感覚や気持ちを経験すること。例えば、「寒さを覚える」とは、寒さを感じることを意味します。「心霊スポットで不安を覚えた」といった使い方もこれに該当します。
- 思い出す:忘れていたことを再び思い起こすこと。「昔の友達を覚えている」や「子供のころの出来事を覚えている」といったケースです。
「覚える」は非常に多くの文脈で使用されるため、日常会話やビジネスシーン、学術的な文章など、さまざまな状況に対応できます。
「憶える」の意味と使い方
一方で、「憶える」は「覚える」と似た意味を持つものの、使われる場面が限定されます。
具体的には
- 感情や思考に深く関わる記憶:この意味では「憶える」は「心に刻み込む」といったニュアンスがあります。例えば、「亡き祖母が作ってくれたおはぎの味を憶えている」という場合、単に記憶しているだけでなく、その感情や思い出が深く心に残っていることを示します。
- 昔の出来事や特別な記憶:「憶える」は通常、感情的な意味合いを強調するため、より深い記憶や心に残る出来事に対して使われます。「昔の出来事をよく憶えている」とは、ただの記憶だけでなく、その出来事が心に強く刻まれていることを表現しています。
「覚える」と「憶える」の違い
「覚える」と「憶える」の違いをまとめると以下のようになります。
- 意味の範囲
- 覚える:記憶する、習得する、知覚するなど、多様な意味があります。
- 憶える:主に「記憶する」という意味に限定され、感情的なニュアンスを含みます。
- 使用シーン
- 覚える:日常会話、ビジネス、学術的な文脈など、幅広いシーンで使用されます。
- 憶える:感情や思い出に関連する文脈で使用されることが多いです。
- ニュアンス
- 覚える:広い意味で使われ、使い勝手が良い。
- 憶える:心に深く刻まれるような記憶に対して使われる。
注意点とまとめ
「憶える」は常用漢字表には載っていないため、教育機関や公式文書では「覚える」が一般的に使用されます。漢字テストなどでは「憶える」と書くと誤りとされることがほとんどです。そのため、子どもに漢字を教える際や公式な文書では「覚える」を使うのが無難です。
ビジネスシーンや日常生活では「覚える」の意味を知っておけば十分ですが、感情や思い出に関する表現では「憶える」が適しています。迷った場合には、一般的な記憶や技能の習得には「覚える」を、感情的な記憶や思い出には「憶える」を使うと良いでしょう。